今回の記事では、西尾維新さんの化物語シリーズの翻訳タイトル(英語版)について紹介します。
小説家の西尾維新さんは、2002年に『クビキリサイクル』で第23回メフィスト賞を受賞してのデビュー以降、小説・ライトノベル・漫画原作と幅広い作品を手掛けている作家です。
なかでも、2006年の一作目『化物語』から始まり現在17冊以上刊行されている<物語>シリーズは、漫画化・アニメ化もされていて多くの方に馴染みのある作品ですが、近年では英語翻訳版も多数出版されており、海外においてもたくさんのファンの方に読まれていることはご存じでしょうか。
日本語版とは違う英語翻訳版の特徴や、海外での評判等も含めて詳細に紹介していきます。
化物語シリーズの小説版(英語)について
一番初めの英語翻訳版が出版されたのは、2015年12月のKIZUMONOGATARI: Wound Taleです。
物語シリーズで日本ではじめに刊行されたのは化物語ですが、時系列で見て一番最初である傷物語から翻訳を開始することにしたようですね。
この作品は、米国の日本マンガ翻訳出版を手掛けるVERTICAL, INC.という出版社から刊行されました。
なお、この会社は、2011年に講談社、DNP(大日本印刷)の共同出資により買収され、2021年現在はKodansha USA Publishingに統合されています。
日本のライトノベル版と同様に、台湾出身のイラストレーターであるVOFANが表紙のイラストを担当していますが、この翻訳版の刊行のために、すべての表紙を新たに書き下ろしています。
海外の物語シリーズのファンの方には、日本版の表紙と違うことに違和感を感じた方もいたようですが、個人的には翻訳版の表紙はかなり好印象です。
ライトノベルの翻訳版は海外ファンの間でも高評価
西尾維新の作品は、支離滅裂な詭弁や戯言を指して「言葉遊び」と呼称される特徴的な文体が使われていることもあり、翻訳をするのは容易なものではないでしょう。しかし、この2015年の出版を皮切りに、短期間の間に次々と出版されてきました。
私も、この物語シリーズはほとんど購入していますが、翻訳のクオリティも高いです。今日現在、Amazon.com(米国アマゾン)の傷物語のレビューを見ると、942件のレビューがありますが、そのうちの93%が星5つの評価をつけていることから、海外のファンからも高評価を得ていることがわかります。
英語版の化物語シリーズ(小説)はどこで購入できる?
購入する際は、Amazonや楽天のようなECサイトを利用することがおすすめです。
この傷物語が発売された当日に、近所の書店を探し回ったものの全く見つからずに苦労したのを覚えています。
そのあとは、東京の紀伊国屋書店の新宿本店で販売されているとわかって、急いで購入しに行ったのですが、今でも英語関係の本が充実している一部の大型書店を除いて、英語版のライトノベルを直接購入できる実店舗は多くありません。
また、2019年頃から、一部のタイトルがKindleでも販売開始されました。
まだタイトルは少ないですが、順次電子書籍化も進むのではないか、と思います。購入前に英語のレベルを確認したい方は、まずこのKindle版のサンプルを入手してみると良いかもしれません。
Kindle版については、こちらの関連記事内で詳しく解説しています。
化物語シリーズのアニメ版(英語翻訳)について

日本で制作されたアニメが海外で配信される際には、一般的に英語吹き替え(DUB)、もしくは英語字幕(SUB)のどちらかの形式がとられます。
化物語シリーズの英語吹替(DUB)は見つからず
化物語シリーズの英語吹き替え版(DUB)のリリース予定があるのか改めて情報を探ってみましたが、それらしいものは見つかりませんでした。
海外ファンの間でも、翻訳するのが難しそうなユニークな言い回しが多いので吹替版は難しいだろう、という投稿がRedditにおいて見られました。
ただし、英語はなくてもフランス語やドイツ語の吹替はあるようですし、ライトノベルの翻訳版も今ではそろっているので、もしかしたらいつかリリースされる可能性はあるかもしれませんね。
Crunchyrollで英語字幕(SUB)をつけて見ることは可能
また、英語の吹替はありませんが、英語字幕(Subtitle/サブタイトル)付きで視聴することは可能です。
「Crunchyroll(クランチロール)」という日本のアニメを視聴するサブスクリプション型のサイトがあるのですが、そこで物語シリーズのアニメ(日本語音声)に英語字幕を付けて見ることができます。
ただし、このサイトはアメリカのサービスで日本国内からの利用に対応していないため、閲覧するためには、VPN等のサービスを利用する必要があります。
化物語シリーズの漫画(英語版)について
化物語シリーズは、2018年6月より大暮維人先生の作画による漫画版も始まっており、こちらの翻訳版(ペーパーバック版)も出版されています。
日本のアマゾンで購入することも可能ですが、全体的に取り扱っている在庫数は少なく、またvolume1.の取り扱いも確認できませんでした。
余談ですが、大暮維人先生のペンネームは ローマ字表記では、Oh! Great(オー・グレイト)となっています。西尾維新さんの名前(NISIOISIN)も回文となっていますが、同じような遊び心を感じられますね。
化物語のオーディオブック(英語版)について

最後にオーディオブックを紹介しますが、個人的にはこれが一番のおすすめです。
物語シリーズのオーディオブックは、現在KizumonogatariとNekomonogatari(White) の2つがリリースされています。最初が、傷物語(時系列でみて一番初めの物語)であるのはわかるのですが、どうして2冊目が猫物語(白)になったのかは正直わかりません。きっと何か事情があったのでしょう。
このオーディブックは、Audible(Amazonの子会社であるオーディオブック大手の出版社)より販売されているのですが、ライトノベル版と同様に、こちらも高い評価をされています。
本格仕様のオーディオブック
Audibleをはじめとする出版社から販売されている、ほとんどのオーディオブックは、小説でも教養書でも基本的に一人のナレーターによって、すべて読まれることが多いのです。
しかし、こちらの作品は、キャラクターごとにナレーターを変えていて、さらに一部のシーンにBGMを挿入するなど、制作陣のこだわりを感じられる本格的な仕様になっています。
僕自身がすでに5年以上、毎年何十冊ものオーディオブックを購入し続けていますが、手間やコストがかかるため、このようなドラマ仕様の作品はとても珍しいのです。
探せばあるのでしょうが、自分の覚えている限りは、スターウォーズのドラマ版と、「The Goal」という生産管理に関する本くらいしか、本格的なドラマ仕様のオーディオブックは聞いたことがありません。
オーディオブックは、ただ文章を音読しているだけのものでも、本を開いて読む行為の代わりにしかならないのものでもありません。アニメ、小説というジャンルと同じように、一つの全く新しい表現手段だと思っています。
なぜ2冊だけ出版されている?
ライトノベルシリーズの翻訳出版が刊行されてきた速度を考えれば、オーディオブックがその中の2冊しか出版されていないことを不思議に思う方も少なくないのでは、と思います。事実、Kizumonogatariのリリースが2016年5月なのに対して、Nekomomonogatari(White)がリリースされたのは2019年4月と、なんと3年以上ものブランクがあるのです。
おそらくですが、その理由は単純に購入する人が少ないからでしょう。
もともと、オーディオブック出版において、アニメ作品が販売されること自体が珍しいのですが、こういった事情から採算が取れずに、次作品のリリースが難しくなっています。
海外ファンの惜しむ声
個人的にはこれはとてももったいないと思っていて。
というのも、そもそもライトノベルの翻訳出版自体が難易度の高そうなこの作品が、圧倒的なクオリティのオーディオブックの販売まで行き着いているというのに、知っている人が少ないために採算が取れずに、シリーズのオーディオブック化がつまづいてしまっているのです。
同じことを嘆いているひとは、海外の化物語ファンの中にもいるみたいで、せっかくなので引用してみたいと思います。
EVERYONE PLEASE BUY THE NEKOMONOGATARI WHITE AUDIOBOOK(『みんな、猫物語のオーディオブックを買って!』(本記事投稿者による翻訳))
前作の傷物語のオーディオブックが販売されてから3年も経ってしまったけど、ついに2作目にあたる猫物語が明日VERTICALから発売されるんだ。
物語シリーズの2作目として猫物語が販売されるのは、時系列から見ると不思議には思うけど、とにかくみんなVERTICALをサポートするために、このオーディオブックを購入してほしい。
なぜなら、このオーディオブックが売れるかどうかは、今後物語シリーズの最新作が販売可能になるかどうかが決まるだけではなく、今後、よりたくさんのライトノベルをオーディオブック化することができるかどうかの進展も関わってくるからだ。
だからもし、いまお金があって、そして少しでも興味があるのならば、どうかこの作品を購入して聴いてみて。一作目のオーディオブック(傷物語)は最高に良くできていたから、今作(猫物語)もきっと素晴らしいものになっていると思う。
もしかしたら、この作品が本当に最後のチャンスかもしれないんだ。
これは、プロモーションとして言っているんじゃなくて、本当に1作目が大好きだったから、もっとたくさんのライトノベルのオーディオブックを聴きたいし、みんなにも聴いてみて欲しいと思ってるよ。
EVERYONE PLEASE BUY THE NEKOMONOGATARI WHITE AUDIOBOOK (Redditのthread より引用)
この投稿は、猫物語が販売される前日にされたもののようですね。
僕もこの方の言うことには共感していて、アニメ・ライトノベルのオーディオブックがこれから普及してほしいと思っています。
特にアニメ・漫画の文化がすでに普及している日本なら、こういう類のコンテンツが充実することによって、もっと気軽に英語の勉強を始められる人が増えるようになります。
また、日本以上にオーディオブックコンテンツが日常に浸透している海外においても、より多くの人に知って貰うきっかけにもなるでしょう。
その他のライトノベルのオーディオブック
化物語シリーズ以外でも、英語で聴けるアニメ・ライトノベル系の作品はありますが、現状は数がとても少ないです。
また、前述の通り本格仕様になっている化物語シリーズと比べると、その他の通常の作品は1人のナレーターによる作品がほとんどであるため、少し物足りなさを感じるかもしれません。
とはいえ、「進撃の巨人」のような人気タイトルを聴くこともできますので、興味がありましたら聴いてみてください。
Audibleに新規登録して無料で聴く
こちらのオーディオブックですが、Audibleにまだ登録していない場合は、無料で入手ができます。
というのも、オーディブルに会員登録をすると最初の一冊は無料で聴ける特典が継続されているからです。もし無料期間中に解約しても、購入した作品は退会後も聴けるため、好きなのを一冊貰えてしまうようなものです。
毎月購入するほど欲しいものがないと思う方でも、僕と同じように、欲しいものがあるときだけ会員になって購入するというのも、良いかもしれません。
とはいえ、英語を学んでいる人ならば、すぐに物足りなくなくなるくらい聴きたいものが出てくるはずです。本国はアメリカのサービスなので、日本語のもの以上に作品数が充実していますので。
英語学習者であれば毎日このような音声を聴く習慣をつけることは、確かな英語力が身に付けるうえで、間違いなく力強い味方となるでしょう。
まとめ
以上、化物語シリーズの英語翻訳版に関する紹介でした。